遺産分割協議書
<遺産分割協議書・目次>
1 遺産分割協議書とは
2 遺産分割協議を始める前の確認事項
3 遺産分割協議の流れ
4 遺産分割協議書の作成・書き方の手順
5 遺産分割協議書作成時の注意事項
1 遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、相続が発生した際に、相続人の間で、最終的に遺産をどう分けるか、話し合いの結果を文書にしてまとめたものです。そもそも、相続といえば、相続争いをイメージされる方も多いですが、相続人同士で円満に話し合いができれば、争いはなく、専門家に頼らなくても済む場合があります。
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2 遺産分割協議を始める前の確認事項
(1)遺言書の有無の確認
遺産分割協議を始める前に、遺言書の存在の有無を確認をします。遺言書がある場合は遺言書の内容に沿って遺産分割が行われますので分割協議は必要ではありません。遺言書がない場合は一旦相続財産は法定相続人全員に共有した形で継承されますので法定相続人同士の話し合いによって分割協議書の作成が必要となります。
■自筆証書遺言の場合
自筆遺言書の場合は家のタンスや金庫、銀行の貸金庫または弁護士、税理士、行政書士などに保管をお願いしている場合もあります。
■公正証書遺言の場合
公正証書遺言書の場合は平成元年以降に作成された公正証書遺言であればコンピューターで管理しているので、どこの公証役場でもすぐに調べることができます。ですが、それ以前に作成された場合は、実際に作成された公証役場に出向く必要があります。
遺言書がある場合は遺言書に書かれた内容が優先されますので分割協議が終わった後に遺言書がでてきた場合は分割協議が無効となり、やり直しとなります。また遺言書が複数でてきた場合は日付の新しい遺言書が有効となります。
(2)相続人の調査
被相続人の出生から死亡までを網羅している戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本を取り寄せて、法定相続人を特定します。相続人をひとりでも欠くと、遺産分割協議書は法的に無効となってしまうので注意が必要です。特に、非嫡出子(いわゆる愛人の子、隠し子など)ですね。最近の判例の動向では、嫡出子と非嫡出子で区別せずに平等に扱う方向になっています(この点は回を改めます)。
(ア)法定相続人とは
遺言書が残されていない場合は民法に定めれらた法定相続人に財産は継承されます。法定相続人には配偶者相続人と血族相続人の2つの種類があります。 配偶者はかならず相続人となり、血族相続人には順位があります。
配偶者相続人・・・法律上の配偶者は、被相続人より先に死亡していない限り、常に相続人になります。まずは配偶者の有無からチェックすべきです。
血族相続人・・・以下の順位のうち、優先される者がいない場合に限り次順位に移ります。
(@)第1順位:被相続人の子及び代襲相続人
被相続人(つまり亡くなられた方)の子が第1順位の相続人となります。相続人となるのに、実子、養子、非嫡出子(認知が必要)とで関係はありません。 相続人となる子が相続開始以前に死亡している場合は、その子の子(=被相続人の孫)が相続人になります。この場合を代襲相続といいます。
(A)第2順位:被相続人の父母または祖父母
被相続人に子がいない場合、または、すべて子が相続の放棄をした場合は、被相続人の父母が相続人になり、父母が既に死亡している場合は、被相続人の祖父母が相続人になります。
(B)第3順位:被相続人の兄弟姉妹またはその甥や姪
第1順位、第2順位の相続人がいない場合や、その全員が相続放棄をした場合は被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。また兄弟姉妹が相続開始以前に死亡した時はその兄弟姉妹の子(=甥、姪)が相続人になります。この場合も代襲相続といいます。
(イ) 法定相続人になれない人について
以下の人たちは法定相続人となることができません。
(@) 内縁関係にある相手方(婚姻届を出していない場合、事実婚)
たとえ何十年も一緒に夫婦として暮らしていたとしても、「婚姻届を出されていない同居者」は法定相続人になれません。
(A) 以下の子供
@配偶者の連れ子、 A義理の子(婿、嫁)、B特別養子として他家に出した子
(B) 相続人の兄弟姉妹の配偶者
第一順位、第二順位の相続人がいない時、またその全員が相続放棄をした場合は被相続人の兄弟姉妹が相続人となりますが、その「兄弟姉妹の配偶者」は相続人になれません。つまり、相続すべき兄弟姉妹が既に亡くなっていて、かつ、その兄弟姉妹に子が居ない場合は、その兄弟姉妹の配偶者に相続の権利がないことになります。
(C) 相続欠格者
被相続人を殺したり、脅迫して遺言書を書かせた人は相続人になれません。被相続人を生前前に虐待したりなどして被相続人の請求に基づき家庭裁判所の審判により相続権を取り上げられた人も該当します。
3 遺産分割協議の流れ
遺言書がない場合は法定相続人全員による分割協議を行い、債務がある場合は限定承認もしくは相続放棄を3か月以内に行わなければなりません。遺産分割協議が話し合いでまとまらない場合は家庭裁判所にて、調停→審判を経て遺産分割を行います。相続税が課税される場合は10か月以内に納税しなければなりません。遺産分割協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成します。→
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4 遺産分割協議書の作成・書き方の手順
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(1) 総論
被相続人が亡くなると同時に、その財産や債務は何の手続きをとらなくても法定相続人に引き継がれ、法定相続人が複数いる場合は、全員で共有した状態で引き継がれます。この共有状態から遺産をそれぞれの相続人に帰属させるのが遺産分割協議です。
(2) 被相続人
亡くなられた被相続人の氏名のほかに本籍、死亡年月日を記載しなければなりません。
(3) 相続人(遺産分割協議の当事者)
相続人の氏名、住所、相続人との続柄(つづきがら)を記載しなければなりません。
(4) 遺産分割の内容
誰がどの財産をどれだけ取得したかをできるかぎり具体的に記載しなければなりません(不動産の所在地・広さ、銀行口座の預金金額等)
※不動産を相続した場合には不動産の登記申請をする時に遺産分割協議書と共に、それぞれの相続人の印鑑証明、戸籍謄本等が必要になります。
(5) 遺産分割協議書の用紙
特に法律で定められた書式、形式はありません。
※A4用紙にパソコン等で作成して印刷するのが一般的ですが、当事務所は和紙で作成することもできます。
(6) 遺産分割協議書への署名・押印
相続人全員が署名し、実印を押印しなければなりません。印鑑証明書の添付も必要です。財産を取得しなかった相続人がいる場合も遺産分割協議書への署名と押印が必要です。用紙が複数枚になる場合は用紙と用紙の間に割印を全員で行います。
(7) 遺産分割協議書の保管
相続人の人数分作成し、相続人各自で保管することになります。
5 遺産分割協議書作成時の注意事項
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(1) 相続人全員による協議が必要
遺産分割協議には相続人全員の参加が必要です。相続人が一人でも欠けた場合、その分割協議は無効となります。また相続人でない方が加わった場合も、その分割協議は無効です。
(2) 未成年者には法定代理人が必要
相続人が未成年者の場合、法定代理人が加わって協議となりますが、その法定代理人が同じ相続人の一人であれば利益相反となりますので、利害関係のない人を特定代理人として選任する必要があります。
(3) 相続人に行方不明者がいる場合
相続人に行方不明者がいる場合は家庭裁判所に「相続財産管理人」を選任してもらい、この相続財産管理人に遺産分割協議へ参加してもらうことが必要になります。
(4) 包括受遺者がいる場合
包括受遺者も相続人と同一の資格で遺産分割協議に参加してもらうことが必要です。
(5) 遺言執行者がいる場合
遺言執行者がいる場合は、その遺言執行者にも遺産分割協議に参加してもらわなければなりません。
(6) 遺産分割協議がまとまらない場合
遺産分割協議がまとまらない場合は家庭裁判所に申立てをして解決を求めることができます。これには遺産分割調停手続き(調停分割)と、遺産分割審判手続き(審判分割)がありますが、審判分割は調停分割を経て、調停でまとまらなかった場合しか申立てできません。→
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