相続についてよくある質問
<相続に関する質問一覧>
◆【相続その1】「相続」とは?「被相続人」と「相続人」とは違うのですか?
「相続」とは、簡単にいえば亡くなった方の財産を引き継ぐことを言います。
法的に説明しますと、ある人が死亡したとき、その人の財産に属した一切の権利義務を受け継ぐこと、になります。
死亡した人を「被相続人」、その所有していた財産を「相続財産」、その権利義務を受け継ぐ人を「相続人」と言います。相続人となれる人は、民法により、その範囲が定められています。
◆【相続その2】「相続」と「遺贈」の違いは?
「相続」の場合は、法律上、「相続人」として定められている者にしか生じません。「遺贈」にはそのような限定はありません。
法的に説明しますと、「相続」とは、被相続人の死亡後、相続人に対し、遺言による相続分の指定、あるいは、それがなければ法定の割合に基づき、被相続人の財産に属した一切の権利義務を引き継がせることを言い、「遺贈」とは、遺贈者の遺言により、受遺者にその財産の全部又は一部を、包括的にまたは特定して贈与することを言います。
いずれも、人の死亡を原因とする点、遺留分を侵害することはできない点で同じですが、相続における対象者が相続人であるのに対して、遺贈の対象者は、特に限定されていません。よって、相続人以外の人に財産を遺したい場合、遺言により「遺贈」をすることになります。
◆【相続その3】相続人になる人は決まっているのですか?
相続人は、配偶者(夫又は妻)がいれば常に相続人になります。それ以外に、@子供、A父母、祖父母等、B兄弟姉妹がいれば、優先順序@〜Bの順に相続人になります!
法的に説明しますと、
◇ 配偶者
配偶者は、常に相続人となります。内縁の妻は、対象となりません。配偶者以外の下記1から3に該当する者がいずれも「いない場合」は配偶者だけが相続人となります。下記1から3のいずれかに該当する者が「いる場合」は配偶者とともに相続人となるか、配偶者がいない場合、下記該当者のみが相続人となります。
1 第1順位 子
被相続人に子がいる場合、常に相続人となります。養子も相続人です。養子(普通養子)は、実親と養親の双方から相続を受ける権利を有します。子には、胎児を含みます。非嫡出子も相続人ですが、相続分は嫡出子の2分の1になります。
2 第2順位 直系尊属
子がいない場合に相続人となります。直系尊属とは、被相続人の父母、祖父母等のことを意味します。被相続人に親等が近い者が優先します。
3 第3順位 兄弟姉妹
子も直系尊属もいない場合に相続人となります。
◆【相続その4】相続人が相続できない場合はありますか?
相続が発生した場合、法定相続人となり得る者のことを「推定相続人」と言いますが、この「推定相続人」が相続権を失うのは下記の3つの場合です。
1 相続人の「死亡」
2 相続「欠格」
3 推定相続人の「廃除」
◆【相続その5】相続をしたくない。断ることはできますか?
3か月以内なら、相続を拒否することができます。
法的にご説明しますと、相続が始まった後、相続人の意思で相続しないことができますが、これを「相続の放棄」と言います。ただし、相続を放棄する場合、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から「3か月以内」にしなければなりません。
また、相続放棄をすれば、その直系卑属に代襲相続権は発生しません。(※代襲相続についてはこちら)
◆【相続その6】相続の欠格や廃除とは?
「相続欠格」とは、相続人側の事情で相続人の資格がなくなることをいい、
「相続の排除」とは、「被」相続人が相続させたくない人の相続権を失わせることを言います。
法的に説明しますと、
「相続欠格」とは、推定相続人について、相続をさせることが社会通念上相応しくない事情がある場合、法律上当然に相続人の資格を失わせる制度です。民法で定めるのは、故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡させたために刑に処せられた者や、詐欺・強迫により被相続人が遺言をし、撤回し、取消し、または変更することを妨げた者、相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠蔽した者などは、相続人となることができません。
「相続の廃除」とは、被相続人が推定相続人に相続をさせることを望まない時、家庭裁判所に請求してその者の相続権を失わせる制度です。推定相続人が被相続人に対して虐待・重大な侮辱を与えるか、推定相続人に著しい非行があったことが必要です。
◆【相続その7】法定相続分とは?法定相続分の割合は?
遺言で相続分の指定がなかった場合、民法の定める相続分(法定相続分)にしたがって相続することになります。
1 配偶者と血族相続人がいる場合
子及び配偶者が相続人であるときは、配偶者に2分の1、子は残りの2分の1を人数で均等に分けます。但し、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1となります。
配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者に3分の2 、直系尊属は残りの3分の1を人数で均等に分けます。
配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者に4分の3 兄弟姉妹は4分の1を人数で均等に分けます。但し、片親のみが共通(半血)である兄弟姉妹の相続分は、両親が共通(全血)である兄弟姉妹の半分です。
2 配偶者がおらず血族相続人のみの場合
(1)子のみが相続人である場合は、人数で均等に分けます。
※ただし、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1です。
(2)直系尊属のみが相続人であるときは、人数で均等に分けます。
(3)兄弟姉妹のみが相続人であるときは、人数で均等に分けます。
※ただし、片親のみが共通(半血)である兄弟姉妹の相続分は、
両親が共通(全血)である兄弟姉妹の半分です。
◆【相続その8】夫(妻)が遺言書を残さずに亡くなった場合、私の相続分はどうなりますか?
相続人があなただけの場合はすべての財産を相続できます。
相続人があなたと子供の場合は、あなたがすべての財産の半分を相続できます。
相続人があなたと直系尊属の場合は、あなたはすべての財産の3分の2を相続できます。
相続人があなたと兄弟姉妹の場合は、あなたはすべての財産の4分の3を相続できます。
(昭和56年1月1日以降生じた相続の場合)
◆【相続その9】本人が死亡した時点で、すでに子が死亡している場合、子の子は相続できるのですか?(代襲相続とは?)
この場合「本人にとっての孫」にあたる「子の子」が代襲相続できます!
法的に説明しますと、
相続人である「子又は兄弟姉妹」が「相続開始以前」に「死亡」し、又は「欠格」「廃除」により相続権を失った場合、その者の子が代わって相続人になることを、「代襲相続」と言います。 代襲される者を被代襲者、代襲する者を代襲者と言います。代襲者の相続分は、被代襲者と同じです。
相続人の直系卑属(子)の場合は、どこまでも代襲します(再代襲、再々代襲…)が、兄弟姉妹については、その子一代の代襲相続のみであり、その子の子の代襲相続権(再代襲、再々代襲…)はありません。
被代襲者が相続を放棄した時、代襲者は相続はできなくなります。
代襲者が複数の場合、被代襲者の相続分を代襲相続人の人数に応じて均等に分けます。
◆【相続その10】相続の対象となる財産にはどのようなものがありますか?
被相続人の財産に属した一切の権利義務を中心とした法的地位が引き継がれます。
これには、積極財産(プラス財産:お金、不動産等)や、消極財産(マイナス財産:借金などの債務等)があります。権利義務と言えないものでも、財産法上の法的地位と言えるものであれば相続の対象となりえます。(契約申込者の地位、占有者の善意・悪意、保証人・物上保証人としての債務など)
◆【相続その11】相続はいつ開始しますか? 相続開始後の財産の管理はどのようにされるのでしょうか?
人の死亡時から相続は開始します。
相続人は、相続開始時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を受け継ぎます。この場合の「死亡」には、自然死や事故死の他、「失踪宣告」など、法律上死亡したとみなされる場合も含まれます。※失踪宣告について
相続人が複数人いる場合、被相続人の相続財産は、遺産分割協議が行われる等によって、個々の相続人への具体的な帰属が決まるまでは共同管理されます。この間は、保存行為、変更行為、その他の管理行為ができ、その費用は、相続財産の中から支払われることになります。
◆【相続その12】相続の承認とは?「限定承認」とは?
相続の承認とは、相続人が被相続人の権利義務を引き継ぐことを言いますが、これには「単純承認」「限定承認」の2種類があります。
1 単純承認について
相続人が被相続人の権利義務をそのまま引き継ぐことです。手続きは必要ありません。なお、相続人が民法で定められた行為を行った場合、自動的に単純承認したとみなされる場合があります(法定単純承認)。借金の方が多く相続放棄をするつもりが単純承認となりますので注意が必要です。是非無料相談等で問い合わせをしてください。
2 限定承認について
相続によって得た財産の限度でのみ、被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認することです。家庭裁判所への申し立てが必要です。相続人が複数人いる場合、限定承認は、共同相続人全員が共同してのみすることができます。相続財産中債務が多いが全体の正確な財産状況が不明の場合にこの方法がとられます。
◆【相続その13】「相続の放棄」とは?
「相続の放棄」とは、相続人にならないことを言います。
法的に説明しますと、民法で決められた方式にしたがって行われる、相続財産を一切承継しない旨の意思表示を言います。原則として、熟慮期間としての「3か月」以内に、家庭裁判所に放棄の申述をし、本人自らの意思であることの確認を受けることで効力が生じます。
ただし、熟慮期間経過後に、被相続人の相続財産が債務超過であることが、相続人において過失なくして、判明した場合には、その債務超過が明らかになった時から、起算することになります。(最高裁判例があります。)
◆【相続その14】遺産相続手続きはどのような流れですか?
◇まずはお亡くなりになった方が遺言を残されていないか、ご確認ください。
1 遺言がある場合
遺言があれば、遺言に基づく遺言執行手続を行う必要があります。※遺言執行手続きについて
2 遺言がない場合
(1)遺言がない場合は、出生から死亡までの戸籍などを調査して、相続人を特定します。
(2)相続人が特定され、複数人いらっしゃれば、@法定相続分の割合で相続するのか、A相続人全員による遺産分割協議に基づく割合で相続するのか、について相続人で決定します。
(3)ア)法定相続分による相続の場合は上記1の戸籍などの公的証明書類を添付して分割の手続きを行います。
イ)遺産分割協議による相続の場合は上記1の戸籍などの公的証明書類に遺産分割協議書を添付しなければなりません。
◆【相続その15】「遺産分割協議書」とは何ですか?
「遺産分割協議書」とは遺産分割の協議の結果を書面にして残したものです。遺産に不動産が含まれている場合は登記手続きの際、添付書面として必要になります。銀行での手続の際にも必要な場合があります。また、後日の紛争を避けるためにも、作成しておいた方が望ましいといえます。
是非、当事務所の無料相談を活用されてください。
◆【相続その16】相続財産を、遺産分割する(数人の相続人で分ける)には、どのような方法がありますか?
遺産分割は、複数人の相続人がいる場合における、相続財産の分割の最終決定のための手続です。この遺産分割には、「当事者間の合意によるもの」と「家庭裁判所の審判によるもの」とがあります。
「協議による遺産分割」は、相続人となる者全員の合意が必要です。この合意が得られない場合は、家庭裁判所に調停を求めることが出来ます。これで決着しない場合は審判へと移行します。つまり、相続人の間で争いがあって、相続財産の分割の最終決定を家裁にしてもらった場合が「審判による遺産分割」です。
なお、相続人のうち、子供が胎児であるとか、未成年者である場合には、親権者と子の利益相反行為になるので、家庭裁判所に特別代理人を選任して貰わなければなりません。
◆【相続その17】「特別受益の持戻し」とは?
特別受益の持戻しとは、相続人中に被相続人から特別の財産的利益を受けた者があるときは、遺産分割に際し、その点を考慮して相続分決め、他の相続人との間に計算上不公平が生じないようにする制度です。
対象となる特別の利益とは、特定の相続人が、(1)被相続人から受けた遺贈や、(2)被相続人から生前に受けたある程度高額の財産的利益です。具体的事例としては結婚時の持参金、居住用建物の購入資金・開業資金などがあります。
◆【相続その18】「寄与分」とは?
寄与分とは、共同相続人中に被相続人の財産の維持又は増加について特別の「寄与」をした者があるときは、遺産分割に際し、寄与分の加算をして相続人間の実質的公平を図る制度です。
協議による遺産分割又は家庭裁判所の審判(調停)のどちらで決めてもかまいません。
考慮の対象となる「寄与」とは、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法によるものです。計算方法は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、その者の法定相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とします。
◆【相続その19】相続手続き上「株券」を自宅や貸金庫などで保管している場合、注意すべき点は?
上場企業の株券は、2009年1月より株券電子化により法律上、株券自体は無価値となり、無効(ただの紙切れ)となっていますが株主の権利は証券会社などの金融機関の取引口座において株券電子的に管理され、これまでどおり株主の権利は守られています。
ただし、株券電子化時に本人名義(相続人名義)ではなく被相続人名義のままであった場合、株券電子化に伴い、株主としての権利を保全するために株主名簿上の名義で「特別口座」が開設されますが、そのままでは株式の売買などの取引はできないので、株式の相続による名義書換の手続を行ってください。
◆【相続その20】相続人以外の第三者に全財産を遺贈するとの遺言が見つかった場合どうすればよいか?「遺留分」とは?
被相続人個人の相続財産の処分は原則として自由ですが、被相続人に依存していた一定の親族のために遺産の一部を留保させる制度が遺留分です。
ただし、被相続人が、相続人以外の第三者、もしくは相続人の一部の者になした贈与や遺贈が遺留分を侵害する場合、それが直ちに無効になるのではなく、遺留分を有する相続人は遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び贈与(相続開始前の一年間にしたものに限る。)の減殺を請求することができるということになります。
遺留分権利者:兄弟姉妹以外の相続人、すなわち、配偶者、子、直系尊属です。子の代襲相続人も含まれます。
遺留分の割合:直系尊属のみが相続人であるときは被相続人の財産の3分の1、その他の場合には2分の1。遺留分権利者が複数の場合は、これに法定相続分を乗じたものが各人の遺留分になります。
◆【相続その21】遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)とは?
遺留分減殺請求権とは、遺留分の侵害を回復するための権利です。
相続によって受ける利益の価額が遺留分額を下まわる場合に、その差額を限度として成立します。 行使の相手方には、受遺者・受贈者たる相続人のほか、他の相続人の遺留分を侵害する相続分指定を受けた相続人も含まれます。
この権利は権利者ごとに行使するかどうか個別に決めることができます。減殺する旨の意思表示だけでよく、裁判による必要はありません。減殺請求権を行使すべき期間は限られており、遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき遺贈又は贈与のあったことを知った時から1年(時効期間)、相続開始の時から10年(除斥期間) が経過すると請求できなくなります。
◆【相続その22】死亡した人が借りていた借家に、その相続人は住むことができますか? 内縁の妻(夫)であった場合は?
1 相続人の場合
家を借りその家を利用する権利を賃借権と言います。この権利も相続されます。
よって、死亡した人の相続人が相続放棄等をせずに相続すれば、家主から出て行くよう申し出があったとしても相続した賃借権をもって対抗できます。
2 内縁の妻(又は夫)の場合
一方、内縁の妻(夫)は、相続人ではないので、賃借権の相続もありません。
ですが、以下のように居住権が認められる場合があります。
(1)相続人がいる場合
判例は、「賃借権自体は相続財産であるので内縁の妻には承継されないが、内縁の妻等 は相続人の承継した賃借権を援用する形で居住権を主張できる。」としています。
相続人が賃借権を主張して、内縁者に賃借権はないからと、借家の明け渡しを要求して来ることもあり得ますが、判例は、賃借権を持つ相続人が家を利用するにつき特別な事由があることを要求しています。つまり、特別な事由がないのに明け渡せという要求は、権利の濫用(自分の持つ権利を本来の目的から外れた形で用いること)に当たるとし、認められないとしています。
(2)相続人がいない場合
賃借人に相続人がいない場合には、内縁者に賃借権を承継させるという規定が借地借家法にあります(借地借家法第36条)。この条文の趣旨は、もし被相続人に相続人がいない場合には、それまで生活を共にしてきた内縁者に特別に承継させようというものです。